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「月神の愛でる花 ~澄碧の護り手~」朝霞月子(ill:千川夏味)

あらすじ
見知らぬ異世界・サークィン皇国へトリップしてしまった純情な高校生の佐保は、若き皇帝・レグレシティスと出会い、紆余曲折を経て、身も心も結ばれる。皇妃としてレグレシティスと共に生きることを選んだ佐保は、絆を深めながら幸せな日々を過ごしていた。そんなある日、交流のある領主へ挨拶に行くというレグレシティスの公務に付き添い、港湾都市・イオニアへ向かうことに。そこで佐保が出会ったのは…!?

本文より抜粋

 早くに帰って来た晩に、ついつい求めてしまうのはどちらにとっても同じこと。
 湯浴みを済ませて寝台の上に横になれば、いつもはすぐに眠ってしまう目も冴えて、どうしても互いへと手が伸びてしまう。
 二人共にまだ慣れない体を重ねる行為ではあるが、その分、試行錯誤しながら互いに触れ、よいところを探り合うのは、言い換えれば体で会話をしているようなものでもある。
 白い足を割り開き、奥まったところに突き入れれば、
「やぁっ……んっ……」
 悲鳴に似た声があがる。だがそこにあるのは、苦痛ではなく受け入れることで得られる悦びだ。
「きついか?」
「ううん、だいじょうぶ。あっ……や、そこは駄目」
 好きという気持ちが溢れて、欲しいという気持ちが強くて、それが二人をより高みへと上らせる。
 硬く反り返った性器が何度も佐保の中を出入りする。濡れた音に混じるのは、
「へ……か、きもち……い……」
 艶のある声。
「私もだ。お前の中はひどく気持ちいい」
「い……の?」
「ああ。いい、とてもいい」
 受け身の側に立つ佐保の負担を考えて、一晩に交わるのは二度までと決めてはいるものの、乱れた敷布の上にしどけなく横たわる桜色に染まった肢体は、レグレシティスの中の雄を刺激するに十分で、ついもう一度と挑んでしまうことも多い。こんなにも自分が貪欲になれることにレグレシティスは驚くが、受ける側の佐保は、気持ちでは受け入れても、体格や体力の違いもあり、体が行為についていけない。
「──も、動けない……。駄目だって言ったのに……」
 濡れた瞳で、恨めしそうに睨まれても煽られるだけなのだが、さすがに無理強いしないだけの理性が残っているレグレシティスは、再び灯される熱を我慢するのに、自制を総動員させなければならない。
「すまない。後始末は私がするから、先に眠りなさい」
「……いや。一緒に寝る」
「わかっている。体を清めるだけだ」
 手も足も動かないほど疲労困憊する佐保との体格差を慮って、制御してもこの有り様。
 本当にどうしてこんなにまで愛しいと思うのか。
 どうしてこんな衝動を知らずに生きて来られたのかさえ、今となっては不思議なくらいだ。
 そんな風に、まだまだ拙いながら、愛情たっぷりの濃厚で充実した夜を過ごした翌日の佐保には、悩みがあった。寝室の洗い物の片付けである。
 小宮の清掃は基本的に侍従のミオや木乃が行うが、皇帝と睦んだ翌朝の寝室だけは佐保が頑として譲らなかった。とは言っても、汚れた敷布などを剥がして新しいものに交換するだけで、洗濯そものは本宮の洗い場で纏めてされるのだが、いろいろと付着した敷布や事後の最中に使った練絹をそのまま渡すのは、かなり恥ずかしい。出来るなら自分で洗いたいのだが、
「貴い方たちには当たり前のことですよ」
 何でもないことのようにミオや木乃に言われて取り上げられてしまい、それすらも恥ずかしい。慣れなくてはと思うのだが、こればかりは一生かかっても慣れないような気がする。
 そんなことを考えながら、寝室の掃除をしていた佐保は、寝台脇の抽斗を開けて小さく唸った。
「どうしたらいいんだろう」
 抽斗の中に納められているのは、軟膏のような柔らかさのある香油の瓶だ。体を重ねる時に、受身になる佐保の身が辛いだろうからと、後孔を解すのに使われる品で、それがかなり減っていることに気付いてしまったからだ。
 小さな白い陶器の器の蓋を開けると、半分よりも少ないくらいしか残っていない。一回でどれくらいの分量を使うのかは皇帝に任せているため、使われている当人の佐保は知らないが、二人が体を重ねた回数に比べて、結構な分量が毎回消費されているように思えた。
「なくなったらどうしよう」
 この香油は元々皇帝の幼馴染の騎士団副団長マクスウェルが、初夜を迎える不慣れな友人のために贈り物として届けたものだ。皇帝の婚礼祝いに贈る品として相応しいかどうかは別として、初心としか言いようのない二人が円滑に行為を進める上で助かっているのは確かだった。
 その香油がもうすぐなくなる。