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「センセイと秘書。」深沢梨絵(ill.香咲)

あらすじ
倒れた父のあとを継ぎ、突然議員に立候補する羽目になった直人は、まさかの当選を果たし、超有能と噂の敏腕秘書・木佐貫に教育を受けることになる。けれど世間知らずの直人は、厳しい木佐貫から容赦ないダメ出しをされてばかり…。落ち込む直人を横目に、彼の教育はプライベートにまで及び、ついには「性欲管理も秘書の仕事のうち」と、クールな表情のままの木佐貫に淫らな行為をされてしまい――!?

本文より抜粋

 しばらく直人を睨み据えたあげくの木佐貫のアクションは、しかし、覚悟していた拳固でもなければ平手打ちでもなかった。
 力を溜めていたはずの彼のこぶしは直人のベルトにかかり、手早く金具を外したかと思うと、パンツのファスナーをサッと下げていた。あげく、その下のごくごく個人的な部分を包み隠したニットトランクスまで、一気に剝いてしまったのだ。
「うわっ、なにすんですか!?」
 いきなり外気に、そして容赦のない木佐貫の視線に晒されて、直人のモノはひたすら小さく萎縮するしかない。
 ふにゃりと柔らかなそれをたなごころに弄び、木佐貫は、軽く目を眇めるようにしてうそぶいた。
「こう申してはなんですが、貴方のここは、意外に慎ましやかなサイズでいらしたんですね。これまでおつき合いなさった女性たちは、この程度のお道具で満足されていたんですか?」
「へ? ひっ、ひど……」
〝慎ましやか〟で、かつ〝この程度〟?
 じつは秘かに抱えていたコンプレックスをごく丁重に、しかし意味合い的にはぐっさりストレートに指摘され、直人はほとんど涙目になりかける。
 いままでかなり親しいともだちにも、いや、身内にだって相談できずにきた話だが、直人のモノは、たしかにちいさい。それだけなら日常、べつに不自由はないものの、関係を持った女子たちとの交際がまず長続きはしないのも、もしかするとこのせいなのか──と、ときに不安に駆られることもあって……。
「ああ、ですがべつにコンプレックスにお感じになることもありませんよ。サイズは若干控えめでも、色も形も悪くない。それにほら、感度もなかなか良好じゃないですか」
 それでもフォロー的なプラス評価をつけ加え、木佐貫が、萎えたモノを親指の腹でやさしく撫で上げる。感度は良好──と評されたとおり、ひとの手の体温を感じたそれは、まだ力ないながらも微かな萌しを示しかけていた。
 カアッ、と頰が紅潮する。日ごろの彼からはとうてい、予想できないやり口だったが、木佐貫は、あきらかに直人をいたぶっていた。この状況は、もしかすると、鉄拳を振るわれる以上に屈辱だ。
「も……勘弁してよ。こんなやり方、木佐貫さんらしくない」
「そうですか? この件は、私にとってはかねてからの懸案事項だったんですがね」
 ハ? と、直人の顔面に大きな疑問符が浮かんだ。
「かねてからって、なんの話?」
 フッと、木佐貫の側はあきれ混じりの鼻笑いを洩らす。
「選挙中から、貴方のガードがあまりに緩いことが気になり続けていたんですよ。その容姿と愛想のよさは、まるで誘蛾灯じゃありませんか。あの短い選挙戦のあいだで、いったい、何人の女性から秋波を送られていたと思います? いや──相手は女性だけじゃない。選挙区に応援演説にいらした宮塚幹事長からも、それに県議会議長の飯島先生からも粉をかけられていた始末じゃないですか」
「し、知らないよぉっ、そんなことっ」
「粉をかけられていることに気がつきもしないで愛想を振りまいてるから緩い、と申し上げているんです。おかげで私は、貴方がいつなんどき、墓穴にはまってもみ消し不能な事態に陥りやしないかと、頭痛の種を抱えさせられていたというのに──」
 ここまで溜めに溜めてきた鬱屈を、今日は一気に爆発させるモードに入ってしまったのだろうか。言うだけ言うと、木佐貫はソファの座面に乗り上げていた膝を床に降ろした。と、位置の低くなったその頭が、直人の剝き出しの下肢に覆いかぶさってくる。
 まさか──と思うまもなく、直人の性器は木佐貫の口中にすっぽりと咥え込まれていた。
 敏感な部位を包み込む、温かく湿った粘膜。その感覚のなまなましさに、ヒイッ、と悲鳴めいた声が洩れる。
「木佐貫さんっ、な、なにをっ!?」
「おもてで悪い誘惑に流されないための処理ですよ。こうして、ときどき出すもの出しておけば、飢えに駆られてついうかうかと他人の誘惑に引っかかるリスクを軽減できるじゃありませんか」
 やや声をくぐもらせながら応じると、木佐貫は、ついで口中に含んだ直人を吸い始めた。
 直人は慌ててその肩を押し返そうとしたが、体格差のある木佐貫の手で腰を抱え込まれ、とてもじゃないがかなわない。
 強く、強く、弱く。強く、弱く、弱く。
 木佐貫の舌に捉われた直人のそれは、リズミカルなディープスロートに誘われて、いやおうもなく嵩を増す。同時に股間全体に、ズウン、と快感が走り抜ける。 
 気真面目な、ほとんど険しい表情を保ったままの木佐貫の口淫は、怖ろしく巧みで情け容赦がなかった。