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「教えてください」剛しいら(ill:いさき李果)

あらすじ
――ご褒美だよ。キスしたいんだろ?――
 やり手の会社経営者・大堂勇麿のもとに、かつて身体の関係があった男・山陵が現れる。「なにをしてもいいから、五百万貸してくれ」と息子の啓を差し出す山陵に腹を立てた大堂は、啓を引き取ることに。タレントとして売り出そうとするが、二十歳の啓の顔立ちは可愛いもの覇気がなく、華やかさも色気もなかった。まずは自信を持たせるためにルックスを磨き、大堂の手でセクシュアルな行為を仕込むが…。

本文より抜粋

「駄目だ、こりゃ。脱いでここまで色気がないのも珍しいぞ。最悪だ」
「……あ……」
 大堂に呆れたように言われて、啓は固まる。
「エッチなこと考えろ」
「えっ……」
「妄想ってやつだよ。そいつを膨らませて、自分のチンコ握ってみろ」
「えっ……ええ」
 やはり大堂には嫌われている。こんな恥ずかしいことをさせるなんて、嫌われているとしか思えなくなってきた。
 意識しすぎたせいなのか、脳裏には何も浮かんでこない。ただ大堂に許され、気に入られたいという思いだけが、惨めに揺れている。
「はぁ──っ……何なんだ……その若さで、もうそこまで枯れてるのか」
 大堂が近づいてくる。そしていきなり啓の乳首を摘み、軽く捻った。
「いっ……痛い」
「顔上げろ」
「……」
 思わず涙目になってしまった。こんなことで泣くなんて情けないが、たまらなく惨めな気分になっていた。
「しょうがねぇなあ。ここからスタートにするか」
 大堂は啓の顎に指を添え、顔を持ち上げる。そしてまた唇を親指の腹でなぞった。
「捨てられた子犬みたいなこの僕を、誰か拾ってください。そんな感じでスタートだ。明日から、撮影しよう」
「撮影って……」
「いや、待て。もう少し、何とかしてからにしよう。このままじゃ、どんな映像を流してもリピーターは掴めないからな」
 そこで大堂は、啓の体を触り始めた。何かを調べているのだろうが、啓の全身が一瞬で粟立つ。
「あっ……」
「んっ? そう、その顔だよ。誰かに、こんなふうに触られたことなかったのか?」
「な、ないです」
「何か感じた?」
「少し……」
 けれど誰が触っても、こんなふうに何かびりっとしたものを感じたりするのだろうか。
 相手が大堂だったから、おかしな感じを味わっているような気がする。
「髪を切って……」
 大堂の手が、啓の髪に触れた。
「次に顔をもう少し華やかな印象にして」
 続けてまた唇が、優しく撫でられる。
「体も……もう少し肉をつけよう。足は長くて、指も細くて綺麗だが、それだけじゃ足りない。ここにもう少し肉だ」
 大堂はそう言って、啓の胸をさする。すると啓の乳首が堅くなり、痛いほどに膨らんでしまった。
「ゲームばっかりやっていて、座りっぱなしだったからだな。ケツもこれじゃあ」
 背後に手を回し、大堂は啓の尻をさわさわと撫でる。するとそれまで項垂れていた性器が、びくんっと反応を示したので啓は慌てた。
 手で押さえたが、大堂には悟られてしまっただろう。
「ダンスレッスンと食事で膨らまないようなら、整形するか」
「そんなところまで、しゅ、手術するんですか?」
「そうだよ。こんなごつごつした尻じゃ、色気がなさすぎる」
 男の尻なんて、みんなそんなものではないのだろうか。だが大堂にぎゅっと尻の肉を摘まれているうちに、覚悟は出来てきた。
「お、お金かけるのは大変ですから、すぐには効果が出ないかもしれないけど、ダンスと食事で頑張ります」
「そうだな……啓のいいところは、素直で、頑張るところだ。そういう性格は、いきなり作ろうと思っても作れない」
 今度は啓の腕を持ち上げて、丁寧に点検しながら大堂は呟く。何気ない呟きだったが、それは啓が一番聞きたいようなことだった。
「ゲームだけやっているような人間は、あまり好きじゃないが、啓の場合はそれで救われていたところもあるからな」
「救われていた?」
「ピュアなのは、現実世界であまり揉まれてこなかったからだろう。だけど、これからはそうはいかない。揉まれるぞ」
「平気です。どんな惨いことされたって、父より酷いことする人は、そういないでしょうから」
 啓の言葉に、大堂は何を思ったのかいきなり笑い出す。しばらく笑った後で、大堂は啓を優しくハグしてくれた。
「マジで、むかつくヤロウだよな。やつの思いどおりになんて、なってたまるか。な、そうだろ?」
「はい……だけど、借金は、僕が返しますから」
「そうだな。ついでに金持ちになって、あんな親父を見返してやれ」
「頑張ります……」
 借金を返したい気持ちはあるけれど、そこに小さな途惑いが生まれた。
 すべてを返してしまったら、大堂との関係もそこで終わってしまうのだろうか。それが寂しいといったら、大堂はずっと啓を側に置いてくれるのか。
 いや、そんな夢のようなことは起こらない。だったらこのまま、ずっと役立たずでいたらどうだろう。そう思ってしまった啓は慌てる。
 それではまるで大堂に恋しているみたいだ。
 ただでさえ迷惑を掛けているのに、これ以上さらに迷惑を掛けるわけにはいかないと分かっていても、心の中では大堂の存在がどんどん大きくなっている。
 どうしてこれまで女の子達に誘われても、何も起こらなかったのか、これでよく分かった。
 啓が求めていたのは、大堂のような男だったのだ。