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「狼だけどいいですか?」葵居ゆゆ(ill:青井秋)

あらすじ
人間嫌いの人狼・アルフレッドは、とある町で七匹の犬と一緒に暮らす奈々斗と出会う。親を亡くした奈々斗は、貧しい暮らしにもかかわらず捨て犬を見ると放っておけないお人好しだった。行くあてがなかったアルフレッドは、奈々斗に誘われしばらくの間一緒に住むことになるが、次第に元気に振る舞う彼が抱える寂しさに気づきはじめる。人間とはいつか別れが来ることを知りながら奈々斗を放っておけない気持ちになったアルフレッドは…。

本文より抜粋

 ぎゅっと額を押しつけて、それから奈々斗はアルフレッドの前に回り込んだ。きらきらする目で見上げられて、アルフレッドは宥める言葉も拒否の言葉も発せなくなった。
「ほ、他にできること、なくてごめんね?」
 奈々斗は真剣な顔で言って、アルフレッドを壁に押しつけた。伸び上がるようにして顔が近づいて、震える唇がアルフレッドに触れる。
 思ったよりもしっかりと弾力のある感触があたたかく押しつけられて、アルフレッドは苦く目を閉じた。引きはがそうと上げた手が逆に奈々斗の背中を抱きしめそうな気がして、触れるのを躊躇う間に奈々斗はそっと舌まで伸ばしてくる。
「──ん、」
 ちいさく漏れた奈々斗の声が濡れて聞こえて、背中がざっと粟立った。
「……よせ」
 危ない、と思いながらなんとか顔を背けると、奈々斗はぐっとアルフレッドの胸元を摑んだ。
「じっとしてて。き、緊張してるから、あんまり上手にできないかもだけど」
「上手っておまえ」
「だって、他に、本当になんにもないんだ。バイト先の先輩に聞いたら、こ、これくらいなら性別関係なくいけるんじゃないって──言われたし、俺が熱出したとき、アルが、き、キス、してくれたし……だから、」
 つっかえながら囁くように言って、奈々斗は強い力でアルフレッドの服をたくし上げた。少しひんやりしたてのひらが腹に触れて、アルフレッドは思わず息をつめる。奈々斗は崩れるようにして膝をつき、露わにした肌に唇を寄せた。
 つたない仕草でちゅっ、と可愛らしくも罪作りな音をたててキスをして、奈々斗は上目遣いに見上げてくる。
「気持ちいい?」
 腹なんかキスされたって気持ちよくない、と言えばいいのに、できなかった。薄暗がりで見てさえ上気した奈々斗の表情に、ごくりと喉が鳴ってしまう。
(──駄目だ)
 奥歯を嚙みしめて、アルフレッドは奈々斗の肩を摑んだ。痛みに顔をしかめる奈々斗にかまわず強引に押し倒し、わざと膝で押さえるようにして馬乗りになる。
「っ、アル……」
 怯えたような、けれどどこか期待するような眼差しが気に食わない。なにをしているのか、奈々斗はきっとよくわかっていないのだ。
 人狼を欲情させることが、どんなに危険か、知らないからこんな顔ができる。
 怒りに煽られるようにして、アルフレッドは奈々斗のジーンズのボタンに手をかけた。たいした力をこめなくてもボタンは弾け飛び、ゆるんだジーンズと下着をまとめて引きずり下ろすと、奈々斗は逃げたそうに身を捩った。
 その膝を摑んで大きくひらかせると、完全にさらけ出された奈々斗の弱い部分は、すでにやんわりと勃ち上がりかけていた。きりきりするような熱がこみ上げてくるのを感じながら、アルフレッドは唇を歪めて笑う。
「期待してるのか? もう勃ってる」
「……っ」
「こんなとこまで赤くして──酔ってるのか? あとでせいぜい後悔しろよ」
 わざと嘲るように言い、淡い茂みのあたりまでうす赤く染まった肌を一度だけ撫でて、アルフレッドは性器には触れずに脚の奥に手を差し込んだ。きゅっと閉じた尻のあわいを探り、窄まったそこをつついてやると、奈々斗の身体がびくりと跳ねた。
「アルッ……待って、俺ちゃんと」
「黙ってろ」
「────ッ」
 男を受け入れたことなどないだろう蕾に、濡らすこともほぐすこともせずに、アルフレッドは二本の指を突き立てた。
 侵入を阻むように硬い孔を抉るように指を回して捩じ込むと、びく、びく、と奈々斗の身体が痙攣する。
「っ……い、痛……っ」
「こうされたかったんだろ」
 あざ笑うように告げて、アルフレッドは奈々斗の顔を覗き込んだ。痛みのせいか、潤んで苦しげな目に向かって、口を開けてみせる。
 そうして、人の姿をしていても人よりも大きい犬歯を見せつけて、それできつく首筋に嚙みついた。
「ひ……っ、あ、……っ」
 どくどくと脈打つ動脈が歯の下に感じられた。小刻みに震えた奈々斗の身体は痛みに竦んでいて、嚙んだまま指を強引に抜き差しすると、悲鳴が上がる。