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「Zwei」かわい有美子(ill.やまがたさとみ)

あらすじ
 捜査一課から飛ばされ、さらに内部調査を命じられてやさぐれていた山下は、ある事件で検事となった高校の同級生・須和と再会する。彼は、昔よりも冴えないくすんだ印象になっていた。高校時代に想い合っていた二人は自然と抱き合うようになるが、自らの腕の中でまるで羽化するように綺麗になっていく須和を目の当たりにし、山下は惹かれていく。二人の距離は徐々に縮まっていく中、須和が仕事で地方へと異動になることが決まり…。

本文より抜粋

 いつもの習慣で、須和は目覚ましが鳴る少し前に目が覚めた。
 横で眠る山下を起こさないようにと、手を伸ばしてアラームのスイッチを切る。
 素っ裸で寝入った経験など、これまでない。須和は慣れない感覚に毛布を引き寄せながら、かたわらで眠る山下の顔を眺める。
 やや伸びかけの無精髭にそっと指を伸ばし、その固い感触にこれが夢ではないのだと思った。
 昨日の晩、時間をかけてゆっくりと最奥まで開かれ、指で嬲られたせいか、普段は意識することのない腰の奥の方が、まだじんわりと火照っているように思える。
 今後、経験できるかどうかわからない朝を、少しでも記憶に焼きつけておこうと、須和はしばらく山下の寝顔を眺めた後、明るくなってきた部屋を眺め、そして、カーテンの隙間へと目を転じ、普段と変わらぬ朝の官舎の様子を眺めた。
 半ば開いたカーテンの隙間から明るくなった空を見ていると、ふいに山下の指が須和の頬に触れた。
「…何?」
「朝日に照らされて、綺麗だなって」
 そう言って、山下は笑った。
 三十も越えている、寝起きの男の顔が綺麗なわけはないだろうと曖昧に笑ったまま目を伏せると、山下の指はさらにそっと須和の頬を押し包むように撫でた。
 須和はその手を取り、自分の指を絡め、山下の大きな手の感触を忘れないようにと、これが最後となってもいいようにと、いくらか頬ずりをする。
 それをどう思ったのか、山下は身体を起こし、顔を近づけてきた。
 昨日の晩もなかった啄むようなやさしいキスを唇にされ、須和は身体を震わせた。
 そのまま腰を抱かれ、そっと唇を重ねてやんわりと吸われると、胸の奥まで震える。もうこれ以上は期待せずにおこうと思っているのに、理性が簡単に飛んでしまう。
「エイ…」
 名前を呼んだ舌先を、忍び入ってきた舌に絡めとられる。
「ん…」
 まだ信じられないような思いで、須和は山下の舌先を受けとめた。
 唇を甘噛みされ、口中に呑み込まれる。舌先を吸い上げられ、食むようにじっくりと裏側まで舐めしゃぶられる。
 そんな濃厚なキスは経験がなくて、驚く一方で、須和はどんどん深くなるキスに溺れ、薄い胸を喘がせる。昨夜は身体の方が勝手に突っ走って心は置き去りにされたようにも思ったが、こんなキスをされると心の方が溺れてゆく。
「なぁ、祐介…」
 山下は須和の背中を柔らかく撫でながら、ベッドの上に横たえてくる。
「もう一度、なぁ…」
 白い脚を割られ、須和は自分から膝を開いて、脚の間に男の身体を受け入れた。
 たっぷりとしたキスで、すでに期待に濡れた先端からは透明な雫がこぼれつつある。
 そこに、もっとあからさまな熱を帯びたものを、その荒々しい形を誇示するようにゆっくりと擦り合わされた。
「…ぁ…、…するの?」
 その生々しい感触に息を弾ませながら中に入るのかと尋ねると、そのつもりだと山下は腰から臀部を大きな手で愛しむように撫でさすってくる。
 温かなその手で、尻をこねるように卑猥な形に開かれ、須和は頷いた。
「いいよ、しよう…」
 山下の背に腕をまわすと、男は満足げな息をつきながら、須和の首筋に顔を埋めてくる。
「祐介、好きだ…」
 ずっと聞きたくて、長い間、欲しかった言葉だった。
 なのに与えられることもなく、かつての山下は須和から離れていった。
 今も、この言葉にどれほどの重みがあるのかは知らない。
 でも…、と須和は思った。
 それでもいい…、一時的なものでもいいから…と、須和は目を閉じた。