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「ウエディング刑事」あすか(ill.緒田涼歌)

あらすじ
 真面目でお人好しな性格の新米刑事・水央は、ある日結婚式場で起きた事件の捜査へ向かう。そこで水央が目にしたのは、ウエディングドレスに身を包んだかつての幼馴染み・志宝路維だった! 路維も刑事で、水央とパートナーを組むのだという。昔から超絶美形で天才…なのに変人だった路維に振り回されていた水央は、相変わらずな路維の行動に戸惑うばかり。さらに驚くことに、路維は水央との結婚を狙っていて!? 二人のバージンロードの行方はいかに!!

本文より抜粋

「さあ、私達の結婚式を挙げるぞ!」
「えっ、何その決定!? 志宝さん、ちょっと……待ってください!」
 路維に手首を掴まれ、半ば引きずられるようにして祭壇前に立たされた水央は、助けを求めるように司祭を見上げた。
「司祭さんからもだめだってこの人を説得してください!」
「いえいえ。すでに代金はいただいておりますので、どなたが結婚式を挙げられようと、私どもは一向に構いませんよ」
「えええ──!」
 男二人が自分の前に立っているというのに、司祭はまるで動じない。
「ていうか、この人男だし、俺も男だし。この人ウェディングドレス着てるし、俺、スーツだし」
「水央。幸せすぎて混乱しているんだな。ああ、構わない。司祭とやら、進めてくれ」
 そう言って胸を張るウェディングドレスの男は、その奇異な姿にもかかわらず、忌々しいほどの美貌を振り撒いている。
 いや、路維に見とれている場合ではない。
「すこやかなときも、そうでないときも、この人を愛し、敬い、慰め、助け、命の限り固く節操を護り、共に生きることを誓いますか?」
「ああ、誓うとも」
 水央の混乱をよそに、式は何事もなかったように進められようとしている。が、司祭の言葉に疑問がわいた。
「え、俺が……新婦?」
「水央、どうなんだ? 私が嫌いか!?」
 だから、嫌いかと問われると困る。路維のことは嫌いではない。たぶん好きだ。好きだから手紙を送った。返事が来なくて落ち込んだ。再会してから、相変わらずの路維に振り回されてはいたが、水央は彼を尊敬しているし、好きなのだと思う。
「き……嫌いじゃないですけど……」
「……まあ、少し一般とは違うお答えですが、新婦さまもお誓いになったということで……」
「え──! ちょっと待ってください。どうしてウェディングドレスを着ている志宝さんが新郎で俺が新婦なんですか?」
 問題はそこではない。しかも男同士で新郎新婦どちらが該当するかなど、実際はどうでもよかったのだが。それは路維も同じだったようで、いきなりウェディングドレスを脱ごうとし始めた。
「じゃあ、交換するか?」
「やめてください──! ここで脱がないで──!」
 結婚式は嫌だ。新婦扱いも腑に落ちない。それ以上に、路維の裸を他の人に晒すなど、水央は耐えられなかった。
 必死に水央が止めると、路維も考え直したようだった。
「そうだな。脱ぐのは初夜にしよう。それより、指輪だ!」
「えっ、あ……はい」
 言われるままに思わずポケットから指輪のケースを取り出してしまったが、結婚式を挙げるのを賛成したと誤解されても仕方のない行為だ。
 水央はすぐさまケースをポケットに戻そうとしたが、その前に路維に取り上げられていた。
「あっ、違う。そうじゃなくて……」
 慌てている間に、路維は自ら薬指を指輪に通し、水央の薬指にも指輪をはめた。あっという間の出来事で、気がつけばもう薬指に指輪が光っていた。
 どうしてぴったり──!
「この二人が夫婦であることを、ここに宣言いたします。アーメン!」
 司祭がそう言うと、エキストラの招待客が一斉に賛美歌を歌い始めた。二人の結婚を祝う歌声に、水央は、パニックを通り越して硬直していた。
「さて、これ以上、面倒な祝辞も祈りも歌も不要だ」
 路維はそう言うと、水央を抱き上げてバージンロードを歩き出す。周囲からはおめでとうの声と造花の花びらが降り注いだ。
 誰か──。
 これはどういうことなのか。
 俺に。
 説明してください──!
 声を出せずに口をぱくぱくと動かしているところに、路維の熱いキスが落とされた。