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「理事長様の子羊レシピ」名倉和希(ill:高峰顕)

あらすじ
 奨学金で大学に通っている優貴は、理事長である滝沢に対して恩を感じていた。それだけでなく、その魅力的な容姿と圧倒的な存在感に憧れ、尊敬の念さえ抱いていた。めでたく二十歳を迎えた優貴は、突然滝沢から呼び出されて、食事をご馳走になる。酒を飲んだ優貴は突然睡魔に襲われてしまう。目覚めると、裸にされ滝沢の愛撫を受けていた優貴は、滝沢の家に住み、いつでも身体の相手をすることを約束させられ…。

本文より抜粋

「おまえは、俺を嫌っているだろう」
 滝沢は苦々しい口調ながら、きっぱりとそう言う。
「俺は薬を盛って、おまえを強姦した。そして強制的に同居させた。まともなやり方でないことくらい、自分でもわかっている。だが、俺はどうしてもおまえがほしかった。野々垣に何度も、卒業してからちゃんと口説けと言われたが、待てなかった」
「く、口説く…?」
 どうしてもほしかったとか、口説くとか、初耳の言葉に優貴は混乱した。まるで滝沢が優貴を好きなように聞こえてしまう。
 そんなことはないだろう。まさか。
「いい年をした男が、二十歳になったばかりの大学生をまともに口説いたところで信じてもらえるとは思えなかったし、自分から気持ちを打ち明けたことなんてなかったから、情けないが怖かった」
「あ、あの、ちょっと、日吉さん…?」
「だからといって、一度手に入れたおまえを失うことはできない」
 滝沢の真摯な目が、射抜くほどの力強さで優貴を見つめている。反らすことは許されない真剣さだった。
「金の不自由はさせないと約束しよう。好きなだけ贅沢をさせてやる。だからこのまま俺の家で暮らせ」
 舞い上がりそうなほどの、すばらしい言葉。
 だが優貴は歓喜に震えそうな心にセーブをかけた。ひとつ、確かめなければならないことがあるから。
「あの、日吉さん、聞きたいことがあるんですけど」
「なんだ、なにが知りたい。なんでも聞け」
「………僕のこと、もしかして、好き?」
 決死の覚悟で口にした質問だった。
 滝沢はしばし無言で優貴を凝視していたが、おもむろに優貴の耳をぎゅっと摘んだ。そのままぎゅぎゅぎゅっと捻りあげる。
「痛っ、痛痛痛っ!」
「この耳はなにを聞いていたんだ。きちんと人語を解することができない耳なのか? 俺の恥ずかしい告白の数々を、台無しにするつもりなのか?」
「ご、ご、ごめんなさい、痛いですッ!」
 滝沢は耳から手を離し、深々とため息をついた。
「好きでなければ、自宅に住まわせるわけがないだろうっ。はっきり言って、一目惚れだ」
「うそ……」
 滝沢はふいとそっぽを向き、ほのかに赤い頬を隠そうとしている。
「面接会場でおまえを見たとき、絶対に手に入れたいと思った。だから特待生に推したし、何度も理事長室に呼び出した。誕生日に呼んで拉致監禁するなんて、好きでなければしないだろう」
 いや、好きでも普通はしないと思う…と、優貴は心の中だけで呟く。
「どうして、もっと早くそう言ってくれなかったんですか。言ってくれていたら……」
「言っていたら、なにか変わったのか? なにも変わりはしないだろう」
 自嘲気味の苦笑に、優貴は反論した。爆発しそうな心臓を抱えて。
「変わります! だって、だって僕も、日吉さんのこと……好きなんですから」
 滝沢の目が、驚きに見開かれる。本心からびっくりしたらしく、硬直して動かなくなってしまった。
「好きだって自覚したのは、つい最近なんですけど」
 ついさっきとは、さすがにまずいような気がして言えなかった。
「でも、思い返せば、最初から好きだったんです。僕も面接会場で、日吉さんを見たとき、目が離せなくなりました。すごく、素敵な人だと思って……」
 優貴はカーッと頭に血を上らせながら、必死で心情を吐露した。