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「花と夜叉」高原いちか(ill:御園えりい)

あらすじ
辺境の貧しい農村に生まれた李三は、苦労の末に出世し王都守備隊に栄転となるが、そこで読み書きもできない田舎者と蔑まれる。悔しさに歯噛みする李三をかばったのは十三歳の公子・智慧だった。気高く美しい皇子に一目ぼれした李三は、彼を生涯にわたって守る「夜叉神将」となるべく努力を続け、十年後晴れてその任につく。だがそんな矢先、先王殺しの疑いをかけられ幽閉されることになってしまった智慧に李三は…。

本文より抜粋

「何を──!」
 はっ、と息を呑む音。
 そのまま力を込めてぐいと引く。
 シュシュシューッ……! と絹鳴りが響き、少女のように小柄な体は、「あっ……」とかすかな悲鳴を上げ、くるりと舞って牀に倒れ込んだ。  李三はすかさず飛び掛かり、馬にでもまたがるように細い体を股座の下に組み敷く。
 煽られた風に、ぼうっ、と灯火が揺れる。
「何をするか!」
 智慧は、男の股の下でもがきながら、険のある目で李三を睨み上げてくる。今まさに、男に組み敷かれているというのに、気の強いことだ。
「何って、ご主君」
 李三は、小明かりに照らされた薔薇のような顔を見下ろしながら、ふんと嘲笑する。そして、手にした錦帯を、これ見よがしにぱん、としごいて鳴らした。
「帯を解かれて、男に伸し掛かられて、この状態で次に何をされるかなんてあんた、古今東西決まりきったことでしょうが」
「な……ッ!」
 抵抗する細い手首をぱしりと捕らえ、やすやすと衾褥に押さえつける。
「言っておきますがね、ご主君」
 ぐっ、と押さえつける力を強め、可憐な唇が恐怖と屈辱に慄くさまを、とっくりと見つめる。
「蓉国王太弟・智慧公子。今のあんたは、王族特権の一切を停止された、身分も何もないただの囚人だ。俺に対して命令する権利は、もうないんですよ」
「……ァッ……!」
 無慈悲に告げながら、獲物の兎でも扱うように、両手首を錦帯でひとまとめに縛りつける。のたうつ体をものともせずに、再び、シュッと絹鳴りの音を立てて、衣服の前を大きく引き開けた。
 李三の目前に、雪のように真っ白な胸と腹が晒される。可憐な乳首。女のような脂肪の丸みは皆無だが、絹をぴんと張ったような、美しく肉のそげた胴。臍の形も、ぽこりと窪んで愛らしく、わずかに汗を浮かべ、ぴくりぴくりと震えるさまも、たまらなく男をそそる。
「凄ぇ……」
 李三は無骨な掌でじっくりと撫で回し、そのぬめるような艶を堪能する。「よせっ……」という呻きなど、無論、無視だ。
「細い細いと思っちゃいましたが、凄いな。本当に女より細い」
「やめろ……!」
「あんた確か、俺より五歳下だから、もう何だかんだで齢二十三でしょう。本当ならとうに嫁も娶って、子供の三人くらいいて、それなりの恰幅もついて当然の年だ。なのにいまだに妾のひとりもいないのは、十五の時にこっちの成長も止まっちまったからってのは、本当なんすか?」
 下卑た口調で揶揄しつつ下肢の布を取り除けようとすると、悲鳴じみた声が上がった。
「やめろと言っているッ!」
 果敢にも、?き出しの片足首が、李三の頭部を蹴りつけようと飛んでくる。しかし李三はそのか細い蹴撃を、片手でぱしんと受け止めた。
 にやりと笑い、掴んだ足首を大きく吊り上げ、左右に開かせる。あっと叫んでも、もう遅い。智慧は男に、むざむざ脚を開かせる機会を与えてしまったのだ。青ざめる智慧の両脚の間に、李三はやすやすと入り込んだ。
「無駄な抵抗はなさらんほうが身のためだ、ご主君」
 屈辱に慄く膝に、なぶるように頬を摺り寄せながら、李三は囁く。
「今でこそ宮廷武官なんぞに納まっちゃいるが、俺はこう見えても、荒くれた辺境で野盗だの川賊だのとやりあってきたすれっからしなんだ。ひどくされたくなけりゃ、大人しく抱かれることだ」
 血の気が失せ、ぶるぶると震える膝に、口づけをひとつ、押し当てる。
「それとも、我がご主君には、ひどくされるのがお好みで?」
「ふざけるなっ! 誰が貴様なぞに!」