
「情けないな……」
子育てに悩んで、年下の青年に慰めてもらっている。そんな自分を恥じて、早川はきゅっと唇を噛んだ。
「情けなくなんてない」
顔を上げろと言われて、早川は躊躇いがちに顔を上げる。
「壱己にとって、あんたはたったひとりの父親なんだ。世界一のパパだ」
「……っ」
白い喉が喘ぐ。
眼鏡を握った手を、祐亮の大きな手に包み込まれて、早川は大きく頷いた。
自分は壱己にとってたったひとりの父親だ。世界一のパパなのだ。そんな決意のような想いが伝わってくる。
祐亮が、包み込んだ手を引く。早川の痩身が、広い胸に倒れ込んだ。
「……っ!? 祐亮…さん?」
濃い戸惑いを孕む声。だが抗おうとはしない。
赤くなった眦に、祐亮の唇が落ちた。
早川は、驚きに目を見開いて、祐亮を見上げる。白い肌に、カッと朱が差した。
「あ…の……」
逃げるでもなく、けれどどうしていいかわからない様子で、早川は祐亮の腕のなかにおさまっている。
そんな早川の濡れた頬を、祐亮の無骨な手がやさしく撫でた。
頬のラインを辿った指先が、半開きの唇をなぞる。早川はふるり…と睫毛を震わせて、熱い息を吐いた。
「あ、あの……んっ」
何か言いかけた早川の唇に、祐亮のそれが重なった。
早川はゆるり…と目を見開いたものの、抵抗するでもなく、かといって応じる術も思いつかない様子で、ただ祐亮の肩にしがみつくばかり。
だが、啄んで、離れる。やわらかな刺激を与えられて、やがて身体の力が抜け、白い瞼が落ちて、祐亮の手管に身を任せた。
『祐亮さんもチューしてる〜』
クロが金色の目を丸くして身を乗り出す。
『ご主人さまと将司さんも、いっつもしてるよ。祐亮さんはあの人間のことが好きなの?』
ラヴラヴも度がすぎる傾向にある自分のご主人さまカップル同様に、祐亮たちも好き合っているのかと、クロが直球の疑問を寄こす。
『まぁな』
間違いはないのだが、好き合っているからといって、すべて一件落着とはいかないのが人間社会の難しいところだ。
「あんたが暗い顔をしてると、俺はどうしていいかわからなくなる」

「祐亮…さん?」
早川の瞳に、じわり…と涙が浮かんだ。
「泣くなよ」
「……っ」
白い喉がヒクリと喘ぐ。
「泣くな……」
朱に染まった耳朶に、囁くように落とされる懇願。
早川は頷くものの、涙は止まらない。
その涙をキスで吸い取りながら、祐亮は痩身を腕に取り込み、ワイシャツの上から肌をまさぐる。早川の腕が、おずおずと祐亮の首に巻きついた。
この先に進む、それが合図となったのだろう。
今一度、ふたりは唇を重ねる。