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もうすでに、錘は巻き上がる頃だった。
それを、へたり込んだ脚を、震えが酷くなる腕で引き寄せて抱えながら眺めた。
上まで巻き上げ、手を離せばゆっくりとまた落ちて、明け方まで灯台を灯す。
「……っ!」
最後の一巻きを、残った力を掻き集めて、身体の重みを掛け、巻き上げた十左は、ふうっ、と、大きな息を吐いて、その場に、膝をついた。
情けない顔の笑みが、灯りを絶やさなかったことの誇りを、訴えるように向けられる。
「……っ」
涙が出そうだった。
十左は、ここにいて。一生、自分の傍にいる。
「失礼、しても、良いですか」
汗まみれの十左は、そう問いかけ、返事も待てずに、ゆっくりと横向きに崩れた。
嵐の夜でもない、普通の重さを普通に巻き上げただけにしては、十左は汗だくだった。
痛みによる汗と、冷や汗と、あれだけの怪我だ気分も悪いに違いない。
「大丈夫か、十左」
否、とは言わないだろうと思いながら、そっと立ち上がって近づいて、その横に、しゃがみ込むようにして座った。
十左は、やはり、はい、と返事をして、満足そうに弱々しく笑ったから。
「……そうか」
呟きで答えて、まだ弾んだ息のままの唇を吸ってみた。
「つ、椿さま……!」
唇は熱く、吐息はすでに火のようだった。
「丈夫だな、十左は」
私など、口も利けないよ、と、それでもまだ、見えるほどの鼓動を打たせる汗に濡れた、剥き出しの胸を見ながらうんざりと言った。
「あ、あの。これは」
自分からすることに慣れてはいても、口を吸われたことのない十左は、防御するように、手の甲を唇に当て、熱で赤かった顔を青ざめさせて訊ねた。
「口づけというのだろう」
いつもしているではないか、と、呆れて、呆けるほど痛むか、とも心配に付け足した。それほどまでに傷は深いのかと。
確かに、合わせる加減が難しい。ものを食べるように口を開けて噛み付いたから、歯が当たって、十左の唇が少し切れた。
そして。
十左の髪に、一重の目元に。
汗の流れる頬に、血管の浮いた首筋に。
「いけません、椿さま」
熱に煮詰められた十左の身体からは十左が強く香って、引き寄せられるように顔を埋めた。
「大丈夫だと言った。十左」
錘を巻き上げる力に比べれば、大した負担ではないだろう。耳に齧り付きながら、椿は答えた。
「私のもの、なのだろう?」
自分が十左のものなら、十左は自分のものだ。
十左の匂いと、十左の熱と。
感じたいものがこれほど強く目の前にあるのに、放っておけるなら、初めから十左を欲しがらない。
「黙って喰われろ、十左……」
倒れたままの十左に、寝間着の裾を指で掻き上げ、白くまだ肉の付かない腿で跨りながら、片目の視線を軽く伏せて、もう《ついで》の無茶を、十左に言い渡した。
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