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頭痛がしていた。
原因は考えるまでもなく、ここ最近の寝不足と、泣きすぎと、慣れない力仕事をしたせいだ。
「…ふ……」
眠れないほど興奮しているというのに、放心している。腹は空いているはずなのに、一向に心がそれを訴えない。何も休まらないのに、何も考えられない。
「…」
見える右目を手で押さえてため息をついた。
壊れてしまったもののようだ。神経と心が完全に分離して、自分勝手に動きたがっている。
椿は、自室にある二人掛けのソファーに凭れ掛かって、軋んで疲労を訴える身体に眉を寄せて目を閉じた。
悲しいことだが、十左は放っておくのが一番良いと思われた。
自分がいては十左は眠らないだろうし、食事は、身体はと、一々世話を焼いて休むどころではないだろう。
取りあえず水桶と布、イモリの黒焼きと、飲み水、小鳥の餌のようになってしまった茶碗の霰を置いてきた。自分が下手な世話を焼くよりも、自分がこうして大人しくしていれば、十左は自分の身の周りのことだけを行って休むだろう。そうすることを許してもいる。
粥を作ってやろうと、手で掬った挙げ句どうしていいか解らずに零してしまった米は――――十左が治ってから拾えばいいのだ。
「……あれは、効くのだろうか」
黒々と、影のようにくっきりとイモリの形をしたあの薬のことを思い出した。
自分も病かも知れない。
千代に言えば、気付けの薬湯を煎じてくれたのだろうが、薬湯がどれかも自分だけではわからないし、聞けば十左は起き出して、痛む肩で薬草を擦って煎じてくれるだろう。
全身がだるく、逆上せたようでも冷えてゆくようでもあった。細かい震えが治まらず、気のせいかと思っていたが、確かに指は震えている。身体の芯も寒気のような震えが腹の奥底から沸き上がって止まらなかった。頭の芯がくらくらとして、どことなく気分が悪い。
堪えよう、と椿は思った。
大人しく、自分のことは自分で行い、十左をそっと寝かせて、早く傷を治させる。
それが多分、十左の想いに応えることだ、と思って、身体に蘇る感触に、思わず椿は自分の身体を抱いた。
暖かい鉄の棒の感触。皮膚が焼ける匂い。いつもより潮の匂いはきつく、炭が爆ぜる音は、頭蓋の中で泡が弾けるように蘇った。
押しつけた鉄越しに伝わる十左の痛み。小さく聞こえる焼ける音と、煙と。
「…!」
余りのおぞましさと、それを行ったのは自分なのだと思うと、叫びだしたいような焦燥と、居たたまれなさに襲われて、鼓膜の記憶に残った音から、椿は強く耳を塞いだ。
それでも途切れるのは波音ばかりで、十左を焼いた音は頭蓋の中で大きくなる一方だった。けれど。
涙でにじむ片方の視界を瞬きで堪え、奥歯を噛みしめた。
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